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関井隆 (2011), p.81
レンズを使った望遠鏡はガラスが紫外線を吸収するために,[波長] 300 nm 程度までしか使えない。
アルミ蒸着の凹面鏡は150 nmまで使えるが,それより短波長では反射率が極端に小さくなる。
そこで,すべての波長について反射させることはあきらめ,特定の波長領域だけを反射させる,多層膜反射鏡という技術が開発された。
原子量の大きい元素と小さい元素を交互に積層させ,ブラツグ回析条件を満たす波長が反射される,というしくみである。
これで10 nmくらいまでの紫外線望遠鏡が可能となる。
SOHO衛星の EIT (Extreme ultraviolet Imaging Telescope) 望遠鏡や TRACE衛星の望遠鏡はこのタイプである。
これより波長が短くなると,通常の意味の反射は使えなくなるので. X線領域では金属は1よりわずかに小さい屈折率を持つことを利用して,面にすれすれにX 線を入射させて全反射を起こさせる,斜入射望遠鏡が用いられる。
これで1nmくらいまでの観測は可能である。
‥‥‥「ひので」の XRT (X-Ray Telescope; X線望遠鏡) も同じ方式である。‥‥‥
波長1nm (エネルギー1 keV) より高エネルギーでは,直接的な撮像光学系は使えないので,すだれコリメータのような検出器でデータ取得後,ソフトウェアにより画像合成する。
「ひのとり」衛星の硬X線望遠鏡,「ようこう」衛星の HXT はこの方式をとっている.
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引用文献
- 桜井隆 (2011) : 太陽大気と彩層・コロナの加熱
所収 : 柴田一成・上出洋介 [編著] :『総説 宇宙天気』, 京都大学学術出版会, 2011, pp.51-100.
引用/参考Webサイト
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