わたしたちは,それとは意識せずに,速さを量として扱っています:
「車の速度を,時速40km から時速80km へ2倍に上げた」
「時速 2km の動く歩道の上を時速 4kmで歩くと,時速6km」
一方,速さは,時間と距離の間の比例関係としてとらえられました。(「比例関係」の定義)
実際,どの比例関係も,量ととらえることができます。
すなわち,「量」の要件を満たすように考えることができます。
速さは,一つの例です。
以下,このことを見ていきます。
量には,倍と和が考えられました。
「比例関係を量と見ることができる」の意味には,「比例関係において倍と和を考えられる」が含まれています。
さて,比例関係において倍と和は,どのように考えられるのでしょう?
速さを例にします。
わたしたちは,あたりまえのように,速さの倍と和を使っています:
- 時速3km の2倍──これは,時速(3×2)km:
[1時間に3km が対応する比例関係]の2倍は,[1時間に<3kmの2倍 >が対応する比例関係]
- (時速 3km の動く歩道の上を時速 4kmで歩くような場面で)
時速 3km と時速 4km の和──これは,時速(3+4)km:
[1時間に3km が対応する比例関係]と[1時間に4km が対応する比例関係]の和は,[1時間に<3kmと4km の和>が対応する比例関係]
「どの比例関係も量になる」を見るための別の例として,「時間と体積の間の比例関係」を取り上げてみます。
この比例関係は,「蛇口から水を出すときの,経過時間と出た水の体積」の場面に使えます。
そして,つぎのような計算をしています:
- 毎秒3m3 の2倍──これは,毎秒(3×2)m3:
[1秒に3m3 が対応する比例関係]の2倍は,[1秒に<3m3の2倍 >が対応する比例関係]
- (二つの蛇口から水をいっしょに出すような場面で)
毎秒 3m3 と毎秒 4m3 の和──これは,毎秒(3+4)m3:
[1秒に3m3 が対応する比例関係]と[1秒に4m3 が対応する比例関係]の和は,[1秒に<3m3と4m3 の和>が対応する比例関係]
「比例関係は量と見ることができる」の数学は,つぎのようになります:
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(N, +, ×) を数の系とする。──これから量形式 ( (N, +), ×, (N, +, ×) ) を導かれる。
( (Q, +), ×, (N, +, ×) ),( (Q', +), ×, (N, +, ×) ) を,( (N, +), ×, (N, +, ×) ) と同型な量とする。
QとQ' の間の比例関係全体の集合は,比例関係の間の算法+と,比例関係に対する数の倍作用 x をつぎのように定義するとき,( (N, +), ×, (N, +, ×) ) と同型な量になる:
(f+g)(x) = f(x) + g(x) (x∈Q)
(fxk)(x) = f(x)xk (x∈Q, k∈N)
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実際にこの内容を手近な数学書の中にさがすならば,「線型代数」のつぎの内容がこれと対応していることになります:
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体K上の二つの線型空間V,V' に対し,VからV' への線型写像全体の集合 Hom(V, V') は,f, g∈ Hom(V, V'), k∈Kに対し f+g および fxk をつぎのように定義することにより,体K上の線型空間になる:
(f+g)(x) = f(x) + g(x) (x∈V)
(fxk)(x) = f(x)xk (x∈V, k∈K)
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