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ウイルス生態学──ウイルスの自然界での動態
作成: 2020-07-23
更新: 2020-07-23
宿主の側から:ウィルスの保存と感染
ウィルスの側から:滞在と移動
病原性ウィルスは,患者の発生が無い時節には,どこにどのように潜在しているのか?
インフルエンザのパンデミーはどのようにして起るのか?
大谷明 (1997), p.112
インフルエンザのパンデミーはどのようにして起るのか?
インフルエンザウイルスの生態学においてこの疑問は重要な課題である。
自然界でA型インフルエンザウイルスはヒトの外にウマ,ブタ,トリの世界に広く分布していることが知られている。
インフルエンザウイルスにはその表面のHAとNAの2抗原蛋白に多数の変異体があることも知られており,トリの世界からは多数の変異ウイルスが分離されている。
一方,実験室では単一細胞に同時に異なる変異ウイルスが増殖すると遺伝子の交換が起り2者のウイルスの雑種が産生されることが知られている。
そこでパンデミーを起すA型インフルエンザウイルスはヒトのウイルスとトリのウイルスの遺伝子交換によって生成される新型ウイルスによるという有力な仮説があるがこの仮説を自然界で実証する必要がある。
これに関しては自然界でいくつかの断片的調査結果がある。
まず,トリのインフルエンザウイルスは容易にヒトに感染しないが,ヒトのウイルスはブタに容易に感染し,また時にブタのウイルスはヒトに感染することが知られている。
またカモのような水鳥ではインフルエンザウイルスの腸管感染が実証され,繁殖したウイルスが大量に湖沼の水を汚染しており,トリ間の感染は湖沼の水を介して感染するらしい(?)。
それでは多様なトリインフルエンザウイルスの遺伝子はどこでヒトインフルエンザウイルスと遺伝子を交換し,トリウイルスの遺伝子をもったウイルスがヒトに感染するようになるのか。
私達はブタから分離したインフルエンザウイルスのオリゴRNA指紋にトリ特有な断片を見つけた。
何らかの機会にブタはトリインフルエンザウイルスの感染を受けたことが考えられる。
そうだとしたら,ブタ体内でヒトインフルエンザウイルスとトリインフルエンザウイルスの遺伝子の交換が行われる可能性が十分考えられる。
BIOLOGY LibreTexts : 9.13A Emergence of Viral Pathogens から引用:
参考サイト
Wikipedia
ウイルス
BIOLOGY LibreTexts : 9.13 Viral Ecology
参考/引用文献
大谷明 (1997) :「病原ウイルス生態学のすすめ」, ウイルス, 47(1), pp.109-112, 1997.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsv1958/47/1/47_1_109/_article/-char/ja/
Andrews, Christopher (1967) : The Natural History of Viruses