Up 動物の帰巣能力──これをどう説明するか 作成: 2025-01-07
更新: 2025-01-07


    アリは,餌を捜しに巣から出て彷徨する。そして餌を巣に持ち帰る。
    ハトレースでは,巣から千キロメートルも離れた場所に車で運ばれたハトが,そこから巣に帰ってくる。
    サケは,川で卵から孵り,海に出て回遊し,そして自分の生まれた川に帰ってくる。

    学者は,この帰巣能力を説明しようとする。
    そして,地磁気,太陽コンパス,星コンパスといったものを持ち出す。
    さらに「その他諸々を総合して」を言い添えて,内容をぼかす。

    彼らが地磁気,太陽コンパス,星コンパスを持ち出してくるのは,それしか思いつかないからである。
    そしてそれらを挙げたところで,思考停止を決め込む。
    「それをどう使ったら巣に帰れるのか」は,彼らには見当もつかないことだからである。


    実際, 「地磁気,太陽コンパス,星コンパスで巣の方向を定める」の中身は,途方も無い計算 (データ処理) になる。
    巣に帰ろうとするアリやハトやサケが,そんな計算をしているはずがない。

    彼らの帰巣能力は,「自ずと巣の方向がわかる」というものでなければならない。
    これは,体内に<巣の方向を常に指すコンパス>を有している,ということである。

    そんなコンパスは,物理的に可能か?
    可能も何も,アリやハトやサケはこれを実現しているのだから,可能なのである。

    このコンパスの工学的アナロジーは,ジャイロコンパスである。
    アリやハトやサケが巣から離れるとき,ジャイロコンパスが起動する。
    このコンパスは,移動中いつでも巣の方向を指している。
    帰るときは,コンパスの指す方向にただ従えばよい。