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Dawkins (1989), p.33
ここで重要なのは、地球上に生物が生まれる以前に、分子の初歩的な進化が物理や化学のふつうのプロセスによって起りえたという点である。
設計とか目的とか指示を考える必要はない。
エネルギーのあるところで一群の原子が安定なパターンになれば、それらはそのままとどまろうとするであろう。
最初の型の自然選択は、単に安定したものを選択し、不安定なものを排除することであった。
これについてはなんのふしぎもない。
それは定義どおりにおこるべくしておこったのである。
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同上, p.35
‥‥ さらに最近では、生命誕生以前の地球の化学的状態をまねた室内実験で、プリンとかピリミジンといった有機物がつくられている。
これらは遺伝物質、DNA自体の構成要素である。
生物学者や化学者が、3, 40億年前に海洋を構成していたと考えている「原始のスープ」にも、これと似たような過程がおこったにちがいない。
これらの有機物は、おそらくは海岸附近の乾いた浮き泡や浮かんだ小滴の中で、局部的に濃縮されていったであろう。
それらはさらに太陽からの紫外線のようなエネルギーの影響をうけて化合し、いっそう大きな分子になっていった。
今日では、大形有機分子が人に気づかれるほど長い間存在しつづけることはない。
つくられるそばからバクテリアその他の生物に吸収され分解されてしまうからだ。
しかし、当時、バクテリアその他のあらゆる生物はまだ生まれていなかった。
大形有機分子は濃いスープの中を何ものにも妨げられることなく漂っていた。
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- 引用文献
- Dawkins, Richard (1989) : The Selfish Gene (New Edition)
- Oxford University Press, 1989
- 日高敏隆・他[訳]『利己的な遺伝子』, 紀伊國屋書店, 1991.
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