Up 舗装都市の地下空洞化 作成: 2025-01-31
更新: 2025-01-31


読売新聞, 2025-01-30
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    人工物は劣化・旧態化する。
    それは,生活の障害になる。
    こうして人工物の大集約である都市は,やがて人の棲めないところになる。

    ひとは,人工物を思う存分つくる。
    それは,「つけを後にまわす」を立場にしているからである。
    地下に下水管を敷設するとき,その時点から腐朽が進行しそしていつか壊れる。
    しかしひとは,これを閑却して済ます。
    実際,後のことを考えたら,何もできなくなる。
    これが,「経済」というものである。


    都市の舗装した地面の下は,空洞化が進行することになる。

    川は土砂を運び,流域に平野をつくる。
    都市は,この平野の上に築かれる。
    都市は,川に堤防を築き,地面を舗装する。
    こうして,土砂の供給が無い所になる。

    降水は,地下に入り,地下に流路をつくる。
    その流水は,周りの土砂を浸食する。
    浸食でできた空間は,天井の落下で大きくなる。


    腐朽して天井が空いた下水管は,上方の土砂を落下させ押し流すコンベアになる。
    このときの地下空洞化は,急速である。
    しかし「下水管腐朽」の契機を除いても,舗装都市の地下は空洞化する。
    地下には,土砂を浸食する川がいくつも流れていることになるからである。
    下水管は,降水を回収し切るものではない。


    硫酸が下水管劣化の原因になるとしても,それは原因のうちの1つに過ぎない。
    もともとコンクリートは腐朽する。

    内部圧力による管の破損もある。
    下水管の円環構造は,外からの圧力に対しては強いが,内からの圧力に対する強度は落ちる。
    豪雨では,下水管は満水の高圧流水となり,内から強い圧力を受ける。
    これが繰り返されることで,下水管はだんだんと弱っていく。


    都市は,舗装の下で土砂の浸食が進行している。
    これは見えないので,ひとはこれに気づかない。
    ひとに見えるのは,下水管の内側の壁だけである。

    ひとは「検査」とか「修復」とかを簡単に言う。
    しかし,陥没した穴に落ちたトラックから人を救出するのにも難儀するように,破壊する物に対しては人はひどく無力である。
    壊れる下水管,舗装の下の地下空洞化は,手の施しようがない。
    即ち,手間もコストも甚大になり,しかも全体的広域的に同時進行していることなので,どうしようもないのである。