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平秩東作 (1783), p.427
蝦夷人は愛憐の心深きものなりといふ。
しりたるもの蝦夷をやとひ、荷を負せて山を通りしに、磯端に船壹艘波にもまれ危く見ゆる人あり。
此蝦夷はるかにみて、やがて荷をすてゝ険阻を走下りて綱をなげ、とかくして扶けたり。
人の難義を助るには其身の勞をいとわず。
昨今年の飢饉に蝦夷地近き所の民家飢に及所へは、蝦夷来りて鹿を捕て養ひつかわしけり。
子などありて育てかねたるをば、とかくして、はごく[育]みく[呉]れたるもありといふ。
常は蝦夷をいとひて追拂様にせしもの、其カによりてたすかりたる者多し。
誠に殊勝の事なり。
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引用文献
- 平秩東作 (1783) :『東遊記』
- 高倉新一郎編『日本庶民生活史料集成 第4巻』(探検・紀行・地誌. 北辺篇), 三一書房, 1969. pp.415-437.
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