Up 彫刻 作成: 2019-02-26
更新: 2024-12-05


    イナウの造形によく示されるように,アイヌは木彫刻の能力に長ける。

      平秩東作 (1783), pp.422,423
    日本より刀劍の類を渡す事、制禁なり。
    マキリ(とても)、刃がねなき小刀を渡す。
    是にて彫物などしたる器物をつくるに、其細工いたりて精密なり。
     ‥‥‥
    此方よりかたを遣しぬれば、水さし香合の類まで作りて贈るといへり。

       菅江真澄 (1792), p.150
    [6月]16日 ‥‥‥
    オトシベ (落部) について休らへば、雨やふりこん、空のけしきよからじとて、運上家のあるじのとどめつれば、 日たかく宿っきてかたらふ。
    此コタンは、シャモの家居もはたち斗たちならび、アヰノのチセヰもいと多く、かやが軒端のいやかさなりて、くれ近く夕顔の咲かかりたる垣根をへだてて、シャモもアヰノもなりむつびてものいふ。 ‥‥‥
    17日 ‥‥‥ あるじ、此コタンなるクチアシカヰが彫工(テント)いとよし、見たまへとて、トコカムヰを彫たるをとうだして見せけるは、まことの蛇をあざむく斗、おぼろげの工とも見えず。
    〔天註──トコカムヰとは蛇をいふとなん〕

       兒山紀成 (1798), p.69
    ‥‥‥ 佐留 [サルモンベツ] の役館にやどる。‥‥‥
    こゝにをる島人、木を彫て巧にものす。
    人々こひもとめて家土産にす。
    かうやうのもの造りなせるは、この島にて悪消 [アッケシ] とこゝに限れり。


  • 引用・ 参考文献
    • 平秩東作 (1783) :『東遊記』
      • 高倉新一郎編『日本庶民生活史料集成 第4巻』(探検・紀行・地誌. 北辺篇), 三一書房, 1969. pp.415-437.
    • 菅江真澄 (1792) :『えぞのてぶり続』
      • 内田武志・宮本常一編『菅江真澄全集 第2巻』, 未来社, 1971. pp.143-167
    • 兒山紀成 (1798) :『蝦夷日記』
      • 高倉新一郎編『日本庶民生活史料集成 第4巻』(探検・紀行・地誌. 北辺篇), 三一書房, 1969. pp.45-75.